HOMEつばくろの部屋2008年2月 第98号 「ニュウナイスズメ」


「ニュウナイスズメ」 

   〜珍説・奈良にいる理由〜

 むかしむかしの話。
 奈良に住むスズメたちが、「ほっぺたの黒いアザ、小さい眼、オスもメスも同じ衣装、なんとかならんかね」と話していました。
それを聞いていた大仏様が、「お前たちがず〜っと私に仕えるなら、願いをきいてやってもいいぞ」と言われました。
スズメたちは大喜び、自分たちの願いが叶うのですから無理もありません。

 大仏様は直ぐにスズメたちの黒いアザを取って、目を大きくして、口ばしの周りの無駄毛を処理して、羽根は脱色して、見違える新しいスズメにしてあげました。今で言うプチ整形ですね。そして、「お前たちは、私の側を離れてはいけないのだよ。未来永劫ず〜っとだよ」と、大仏様は新しいスズメたちに約束させたのです。

大仏様:ところで、お前たちの名前だが、「新しいスズメ」では名前らしくない
     ので「ニュースズメ」ではどうだね。

新しいスズメ:コレぐらいの変化でニューというのはおこがましいです。
        何か他にないでしょうか。

大仏様:それぐらいの変化では、「ニューではないのか」、
     では「ニューデナイスズメ」はどうだ。

新しいスズメ:ちょっと待って下さい、「でない」は否定の意味、
        英語でもdeny(ディナイ)は否定するという意味ですよ。
        そんな言葉が入った名前は困りますよ。

大仏様:それでは、ちょっと変えて「ニュウナイスズメ」ならいいだろう。

新しいスズメ:う〜ん、まだ否定が入ってますけど・・・
        大仏様がこんなに言われるのだから、いいかな。

 ということで、新しいスズメたちは「ニュウナイスズメ」と呼ばれ、奈良の大仏様のお側でお仕えするようになりました。ところが、どこの世界にも約束を守らない輩はいるもので、長い年月が経つうちに奈良から出て行くニュウナイスズメもいました。出て行ったものの、どこか後ろめたいところがあるのか、全国に広がるわけでもなく、局所的にまとまって生活をしているようです。

 私たちの近くには普通のスズメしかいないのに、奈良に行けばニュウナイスズメに会えるという不思議なことを、あらためて考えてみました。よそに行って知ったかぶりをして話さないようにお願いします。ここに書いたことはすべてフィクションです。念のため。

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